胡蝶綺 ~若き信長~ スタッフインタビュー【その5】
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制作現場スタッフの熱い声をお届けするスペシャル企画
【第5回】歴史設定監修 下山修博
「胡蝶綺 ~若き信長~」はオリジナルアニメーションということもあり手探りしながらの「ゼロ」からの出発でした。そこには本作ならではの苦労やエピソードがあり、その中で奮闘する現場スタッフの熱い声をお届けいたします。
第5回は、歴史設定監修 下山修博。
――― Q1.お仕事の内容を教えていただけますか?
脚本や各種設定について、年代的な整合性を確認したり、当時の文化・習俗などについて史料を提示したり、セリフ回しについて時代性を損なわないような提案をするなど、いわゆる考証的な仕事全般という感じです。美術・プロップ設定についても、城の縄張り(構造)のラフスケッチを起こしたり、画面に登場する文面を起こすなど、かなり幅広くやらせていただきました。
――― Q2.本作にかける意気込み(←第6回で信長様と恒興さんにご指摘されたので修正いたしました)をお願いいたします。
近年、織田信長については研究がかなり進んでいて、そこから見えてきた人物像はひと昔前のステレオタイプなイメージとは相当変わってきています。そうした最新の信長像とも喧嘩しないような着地点を提案できたらありがたい、と思って臨んでいました。
あと、若かりし頃の信長についての史料は『信長公記』の首巻に頼らざるを得ないのですが、だからこそむしろ頼り過ぎないほうがステレオタイプから距離を置けるのではないか、みたいな提案もしました。でないと『信長公記』のアニメ化になってしまいますから。
公記は貴重な史料ですが一次史料ではないので、「首巻はあくまでも作者の太田牛一が伝聞した話」という想定からの一点突破であえて自由に発想してもらう、というか。諸々具現化できたかどうかは…観た方々のご判断にお任せします。
――― Q3.こだわっている点をお聞かせください。
「神は細部に宿る」とはよく言ったもので、どんなに破天荒で外連味のある物語でも、細部の設定がしっかりしていればより自然で強固な世界観が構築できると信じています。ただ、こだわりすぎたら物語のダイナミズムが損なわれるので、そのあたりのさじ加減は難しいな、と。
本来なら当時の男性は全般的に烏帽子で頭を隠すのが当たり前で、高貴な女性は頭と顔を隠すのが当たり前でしたし、名前も仮名(けみょう。通称のこと)で呼ぶのが通常だったのですが、そういうところにこだわっていたらアニメにならないと思うので(笑)、ある程度は差っ引いた状態からスタートした感じです。
――― Q4.苦労話やエピソードなどがありましたらお聞かせください。
たとえば夜間の外出時に使う照明具ですが、この作品の時代はまだ蛇腹の提灯は登場していないので、いわゆる松明を提案したのですが、かさばるし光源の表現が難しくなることもあり、考証的にはおそらくギリギリの「籠提灯」に落ち着きました。
それにしても、今作の光源と陰影の表現は素晴らしいですね。
また相撲のシーンについては、この時代だと勧進相撲(神社や寺の境内でやる興行相撲)が始まったころとされていて、行事が登場するのもおよそこの時代のようなのですが、まだ土俵らしい土俵はなかったはずで、ゆえに表現としては「過渡期の興行相撲」っぽい形に落ち着きました。
こんな感じで、ギリギリの線を狙ったものはいくつかあります。
沢彦がたしなんでいる茶の湯もそうですね。勘違いされがちなのですが、利休以前にも武野紹鴎など大茶人がいましたし、禅僧ならこの時代に茶の湯をやっていても問題はありません。
ただ過渡期ではあるので、広めの部屋(大きさ的には四畳半以上の茶室)に唐物・高麗物っぽい茶道具で表現する、という形になりました。
――― Q5.ぜひここを見てほしいというところはどこですか?
上記のような「細部」ですね。馬に右側から乗る、瓦屋根の建物が寺社以外ほぼない、搔盾がちゃんと登場する、雑兵がいかにも雑兵っぽいなどなど、おそろしく地味ながらしっかり設定されたところは多々あるので、そのあたりを気にしていただけるとありがたいです。
ただ、気にもかけられずにサラっと流されるのも、違和感がない証拠といえるかもしれないので、それはそれでよいのかなと。
――― Q6.本作は織田信長を扱っていますが、好きな戦国武将はいらっしゃいますか?いる場合、誰でしょうか?
挙げるとキリがないのですが…あえて言えば蒲生氏郷とか水野勝成あたりでしょうか。
前者は人材活用の天才ですが惜しくも若干早めに逝去してしまったのでいまひとつ知られていないのが残念です。後者は破天荒なエピソードが多い人物ですね。
戦場で暴れては出奔し、戻ってきてまた暴れて…を繰り返すという変な人物です。戦国時代ではないですが、南北朝~室町初期のバサラ大名・佐々木道誉みたいな人も破天荒でいいですね。そういう人物がかなり好みです。
――― Q7.戦国の人物になれるとしたら誰になりたいですか?よろしければ理由もお願いいたします。
名もなき職人でしょうか。「職人歌合」などを見ると人生を謳歌しているように見えて、日々の暮らしを想像するのも楽しいです。武士や公家は大変そうなので結構です(笑)。
――― Q8.ご視聴されている皆様にメッセージがありましたらお願いいたします。
歴史に詳しくない方でも楽しめる作品だとは思いますが、知っていれば知っているなりに楽しめる作品だと思います。「へぇーそうきたか」「なんかそれっぽくていいな」とでも思っていただければ幸いです。
◎放送情報
AT-X:7月8日より 毎週月曜 21:30~ ※リピート放送あり
TOKYO MX:7月8日より 毎週月曜 22:30~
BSフジ:7月8日より 毎週月曜 24:30~
WOWOW:7月10日より 毎週水曜 24:00~ ※全話無料放送
◎配信情報
dアニメストア:7月8日より 毎週月曜23:00~ ※独占先行配信
他配信サイトにて配信(配信サイトはこちら※胡蝶綺~若き信長~公式サイトへ移動)
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